MBTIは当たらない?
このページは、MBTIを否定するために書いたものではありません。「よく当たる」と感じる人と「全然ちがう」と感じる人が両方いるのはなぜか、心理学の研究がどこを問題にしてきたのかを整理します。読み終えたとき、何に使えて何に使えないかが分かるようにしたいと思っています。
指摘されてきた3つのこと
MBTIへの批判は、感情的なものばかりではありません。研究として整理されてきた論点は、おおむね次の3つです。
- 信頼性——同じ人が受け直すと、別のタイプになることがある
- タイプという形——人の性格は、2つのグループにきれいに分かれていない
- 説明の作り——誰にでも当てはまる書き方をすると、誰でも「当たっている」と感じる
順に見ていきます。
1. 受け直すと結果が変わる
性格検査の質を測る基本的なものさしに再検査信頼性があります。同じ人が時間をおいて受け直したとき、同じ結果が出るかどうかです。性格は短期間では大きく変わらないはずなので、変わってしまうなら測り方の側に問題があることになります。
MBTIについては、数週間後に受け直すと相当な割合の人で4文字のどれかが変わる、という報告が繰り返しなされてきました。Pittenger によるレビューは、この点を主要な問題として挙げています。
ただし、ここは誤解されやすいところでもあります。結果が変わるのは、回答が毎回でたらめだからではありません。多くの場合、その人の点数が境目のすぐ近くにあるからです。たとえばE寄りとI寄りが51対49の人は、その日の気分で簡単に反対側へ行きます。それでも出力は「E」か「I」のどちらかしかないので、まるで別人になったように見えるわけです。
つまり問題は「測れていない」ことではなく、測った結果をどちらか一方に割り振ってしまうことにあります。ここが次の論点につながります。
2. 人はタイプに分かれていない
MBTIは、人を16の型のどれかに割り当てます。これが成り立つためには、たとえば外向性の分布が「外向の山」と「内向の山」の2つに分かれている必要があります。
ところが実際に多くの人のスコアを集めると、分布は真ん中がいちばん厚い1つの山になります。身長と同じです。背が高い人と低い人はいますが、人類が「高い族」と「低い族」に分かれているわけではありません。性格も同じで、多くの人は真ん中あたりにいます。
真ん中がいちばん厚いということは、境目のすぐ近くにいる人がいちばん多いということでもあります。タイプ分けがもっとも不安定になる場所に、いちばん多くの人がいる。1の問題が起きやすいのは、このためです。
3. 当たっていると感じる仕組み
「読んだら本当に自分のことだった」という感覚は、それ自体は正しさの証拠になりません。誰にでも当てはまる曖昧な記述を、人は自分に固有のものとして受け取りやすいことが知られています(バーナム効果/フォアラー効果)。
たとえば次の文を読んでみてください。
あなたは人から好かれたいと思う一方で、自分に対しては厳しい評価をしがちです。まだ活かしきれていない力を持っていますが、それを発揮できていないと感じる場面もあります。外向的にふるまえるときもあれば、慎重になるときもあります。
多くの人が「当たっている」と感じます。これは性格診断の文章がよくできているときほど起きやすい現象で、MBTIに限らず、このサイトの結果文にも同じ力が働きます。だからこそ、読んで納得できたかどうかだけで診断の質を判断しないほうがいい、ということです。
それでもMBTIが役に立つ場面
以上は「MBTIには価値がない」という話ではありません。次のような使い方なら、十分に意味があります。
- 自己紹介や雑談のきっかけ——4文字は覚えやすく、人に言いやすい。共通言語としてよくできています
- 自分と違う考え方があると知ること——「自分の当たり前は全員の当たり前ではない」と気づく入口になります
- 語彙をもらうこと——自分の感覚に名前がつくと、人に説明しやすくなります
いっぽうで、次の使い方は避けたほうがよいとされています。
- 採用・配属・評価の判定材料にすること——結果が変わりうるものを人の選別に使うべきではありません。これは本サイトの診断についても同じで、利用規約で禁止しています
- 相手を決めつけること——「あなたは◯◯だからそうなんだ」は、タイプの使い方としていちばん荒い部類です
「もっと確かめられている枠組み」を見たいなら
心理学の研究で共通言語として使われているのはビッグファイブ(五因子モデル)です。人を型に分けず、5本のものさしの高さで表します。
ビッグファイブなら結果が絶対に変わらない、ということではありません。自己申告である以上、その日の状態に影響されます。違うのは、「ほとんど真ん中」をそのまま真ん中と記録できることです。境目で無理に割り振らないので、1の問題が起きにくくなります。
MBTIの4文字が5つの軸とどう対応するのかは、MBTIとビッグファイブの違いにまとめました。
本サイトが自分に課していること
他人の診断を評価するからには、自分の側も書いておきます。
- 使っている質問項目と採点方法を全部公開する(パブリックドメインのIPIP 50項目)
- スコアを偏差値やパーセンタイルだと偽らない(1〜5の平均を0〜100に直しただけの値です)
- タイプ名は必ずスコアと一緒に出し、境目の近くに出た軸があるときは「隣のタイプに近い」と明記する
- 「良い・悪い」の評価をしない。適職を判定しない
- 回答をサーバーに送らない(プライバシーポリシー)
参考文献
- Pittenger, D. J. (1993). The utility of the Myers-Briggs Type Indicator. Review of Educational Research, 63(4), 467–488.
- Pittenger, D. J. (2005). Cautionary comments regarding the Myers-Briggs Type Indicator. Consulting Psychology Journal: Practice and Research, 57(3), 210–221.
- McCrae, R. R., & Costa, P. T. (1989). Reinterpreting the Myers-Briggs Type Indicator from the perspective of the five-factor model of personality. Journal of Personality, 57(1), 17–40.
- Forer, B. R. (1949). The fallacy of personal validation: A classroom demonstration of gullibility. Journal of Abnormal and Social Psychology, 44(1), 118–123.
MBTI® は The Myers-Briggs Company の商標です。本サイトは同社と関係がなく、MBTIの設問・採点方法を使用していません。